第1話 綺麗なもの

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そのような経験はないだろうか?僕はある。今がまさに・・・それだ。 見入ってしまうどころか、気づいたら僕は彼女の目の前に居た。彼女は驚いた表情で僕を見上げ、黒の瞳はなんども瞬きを繰り返している。 僕は何故彼女の前に居るのだろう。いや、その前に彼女に対し急接近したいい訳をすべきだろう。だが、どういい訳をすればいい? 君があまりにも綺麗で 何処のナンパ男だ。絶対言わない。言えない。 ちょっと腰が痛くて 僕は一体何歳なんだ。大体座りたいなら他にもベンチはある。 ・・・駄目だ。自分の考えが全て自分に否定される。 僕の内心の困惑を知ってか知らずか、彼女の方から僕に声を掛けてくれた。 「びっくりした。何かに引っ張られるみたいに真っ直ぐこっちに来るから」 彼女はくすくすと笑った。その仕草の一つ一つさえ見とれてしまった僕は何か色々と末期だ。おかしい。僕がおかしい。 僕は何も考えずただボーッと彼女を見つめていた。不審者として通報されても文句は言えないレベルだ。しかし、そんな僕の様子を彼女は勝手に解釈して、「これ?」と自分の白い髪を一房つまんで、僕に見せてきた。 「元は黒かったんだけど、段々白くなっちゃったんだ」
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