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昔、村を荒らしていた鬼がいた。鬼といっても、鬼のように恐い海賊だ。
彼らは村から遠く離れた島に隠れ住み、食料が無くなっては村へとやってきては食料を奪っていった。そのついでにと、金銀財宝をも奪っていく。
村人達は悩んでいた。役人に知らせ、海賊を退治してもらいたかったが、どうしても知らせることができない事情があった。家族を人質にとられた訳ではない。問題なのは、奪われた金銀財宝にあった。
役人に黙って村人達が溜め込んできた金銀財宝。そんなモノがあると、役人が知れば、何かと理由をつけて没収することは目に見えていた。いつの時代も人間というのは欲深い生き物なのだ。
「どうすればいいんだ」
誰も答える者はいなかった。このまま、泣き寝入りするのも嫌だし、これ以上、隠し財産を海賊に奪われるのも嫌だった。
そんな時だった。村に救世主が現れたのは。
村はずれに澄む老夫婦が昔、養子として迎えた青年、桃太郎が海賊退治をすると名乗り出たのだ。村人は大いに喜んだ。同じ穴のムジナならば、役人に知らせることなく事を済ませられる。もし、海賊に殺されたとしても所詮は赤の他人だ。心を痛める必要もないし、自分達が損をすることもない。
お爺さんとお婆さんは桃太郎に吉備団子を持たせると、鬼退治へと向かわせた。
桃太郎は道中、犬、猿、キジを仲間に引き入れ海賊が住む鬼ヶ島へと船を出した。海賊達の決戦は間近に迫りつつあった。
ところが、鬼ヶ島に船を寄せ停泊したと同時に、桃太郎は突然、恐ろしいことをした。海賊を懲らしめようと意気揚々としていたお供の二匹と一羽の動物を斬り殺してしまった。
元々、桃太郎は彼らに戦ってもらうつもりはなかった。そもそも、犬や猿、キジが暴れたところで、何になるという。海賊達に野生の獣だと思われ、すぐに殺されるのは目に見えていた。桃太郎は別の目的があらって、彼らを仲間に加えたのだ。
鬼ヶ島に上陸した桃太郎。彼はコソコソと隠れるような行動はしなかった。堂々と島の道を歩き、海賊達の住処まで辿りつくと、門を叩いた。
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