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「誰だ?」
門の向こうから野太い声が聞こえた。覗き窓が開かれ、そこから海賊の門番がギロリと鋭い目を光らせ、門前に立つ桃太郎を睨みつけた。この周辺を荒し廻っている海賊だ。大の男でもドキリとするのに、桃太郎は実に堂々としていた。
「ここが、天下に名を轟かせる海賊の住処だと聞き、参上した。私の名前は、桃太郎。是非とも、あなた方の仲間にしてもらいたい」
「俺達の仲間だ?」
門番は自分達よりも、貧弱そうな背格好をしている桃太郎を見て思わず笑った。着ている服は煌びやかで立派だが、それ以外はとても役に立ちそうにない。
「はっはっはっは。バカも休み休み言え、お前みたいな若造に何が出来るというのだ」
「私のような若造であるからこそ、出来ることもあります」
桃太郎は一歩も引かずに言った。
「何だと」
「あなた方はいつも、強硬な手段で村から食料などを奪っていきます。しかし、いつも、うまくいきますか?村人だってバカではない。無駄だと分かっていても、一応の抵抗はしてくるはずです」
「言われてみればそうだな」
門番は思わず唸った。貧弱な村人の攻撃など痛くも痒くもない。しかし、人間というのは、しぶとく、知恵も働く。以前も、三度目の襲撃の際、村人が仕掛けた落とし穴に填って門番も負傷した。その為、現在は門番という、極力動かなくていい立場を任されていた。
このまま、村人の抵抗がエスカレートしていったら、いつの日か死人が出るかもしれない。
「うむ・・・。確かに、油断はできないな」
「そこで、私の伝番となります。私は、あなた方のような強い身体つきをしていません。この服さえ、脱いでしまえば、どこにでもいる普通の青年です。私なら村を彷徨いても怪しまれることはありません。安全な道を見つけ、皆様を安全に案内することができます」
「・・・なるほど、間者の役を買って出るという訳か。だが、お前のことは完全には信用できない」
「何故です?」
「お前だって、人間だ。俺達を騙して、危険な道を教え、一網打尽にする算段を考えているかも知れない」
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