2、LOST COLORS

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 さえないと思った女の子は、つぶらな瞳を細めて屈託なく笑った。  今はそういう笑顔は見たくない。  ここでイラストをビリビリに引き裂いてみたら、どんな顔をするだろう。  無性にやってみたくなるよ。 「これは、私が一番きれいだと思っている空のイメージです」  きれいだと?  こんな濁った空のどこがきれいなんだ。 「空が好きなんですよ。自分の心を映し出してるみたいで」  自分の心を映し出す?  彼女のその言葉が引っかかって、俺は千円も払ってそのイラストを買った。  その後電車に乗っている間も、電車を降りて歩いている間も、ずっと考えた。  ぐるぐると。
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