1、僕の証と君の笑顔

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 時々ね、こうやって歌っていると、本当に歌うことが嫌になるんだ。  お決まりの駅前の路上、十八時。  どれだけギターを掻き鳴らしてもさ、どれだけ声を張り上げてもさ、誰もこっちを見ちゃくれないから。  すたすたすたすた、そんなに急いでどこ行くのって。  ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ、その話はそんなに面白いのかって。  その耳は飾り物なんですかって。  どうせ下手くそですよ。  分かってますって。  がしゃがしゃ指を動かしてさ、血滲ませてさ、嫌になるんだよ。  それでも、やめようとか、やめられないとか、そういうことじゃなくて。
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