落花流水

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落花流水

どんなに夜が長くても朝は必ずやってくる。 「……ん、朝?」 カーテンから零れる光に詩織は目を開ける。 体を起こそうと手を突いて――、 「あ」 制服姿のまま眠ってたことに気がついてため息を漏らした。 あのまま寝ちゃったんだ。 あんなことがあったのに寝れるなんて……。 自分の神経の図太さに苦い笑いがこみ上げてくる。 「シャワー、浴びようかな」 そう、いつまでもこうしてるわけにはいかない。 制服はスペアのものに着替えて、学校に行ってそれから――。 詩織はギュッと唇を真一文字に結ぶと制服のリボンをしゅっとほどいた。 「おはよ」 親友、美紀の声に「おはよ」と答えて彼女の車に。 「そろそろ卒業式だね」 「だね……」 学年末テストが終われば、卒業式。 美紀の言いたいことは分かる。 だけど、昨日のことは言えるはずもない。だから、 「テスト、赤点取らないようにしなきゃ」 なんて詩織が口にすれば、 「当たり前!」 と美紀は詩織の頭を小さく小突いた。 車は学校に。 「寒っ」 まだコートのいる季節。 だけど見る景色は確実に春は近づいていた。 「ちゃんと来たか」 後ろから聞こえる声に詩織の方がビクリと反応する。 「当然。あたしがついてるんだから」 と美紀の声に「そりゃ失礼」と彬も返して、視線は詩織に。 詩織も逸らすことなく真っ直ぐに彬を見つめた。 「――後で聞きたいことがあるんですけど」 「それって『数学』の話?」 「赤点取りたくないんです」 そんな詩織の声に彬はクスリと笑って、 「朝のSHR終わったら来いよ」 その声に詩織は「はい」と答えた。 教室についた頃、鳴り響く予鈴。 「なんか、あった?」 美紀の声に詩織はふるふると首を振る。 「恭さんが見つかった、とか」 「……違うよ」 あれは恭じゃない。 あたしの知ってる恭じゃないから、 「でも、帰ってくるから」 そう返ってくる声に美紀も「うん」とだけ答えた。
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