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父とも島崎柚奈とも連絡がつかないまま不安な朝を迎えた真帆は、祝日ということもあり、外出許可を得るために職員室に向かった。
Xと名乗った謎の人物とのやりとりのログは真帆が電話をかけたりしているうちに消滅していた。
初めから短期消滅型のメッセンジャーアプリだったようで、試してみたが復元はできなかったし、Xの探知も失敗に終わった。
何もなかったらいいけど。そう思いながら不安を払しょくできず、とりあえず自宅に帰ってみようと思い立った。
高性能な自宅のPCからなら何かわかるかもしれない。ただのいたずらなら、久しぶりに父と顔を合わせるのも悪くない。
そう考えると少し気分が楽しくなってきた真帆だったが、「失礼します」と入った職員室の中は騒々しかった。
「遠藤! 丁度今呼びに行こうと思っていたところなんだ。まさかもう知っているのか?」
振り返った服部孝之教官の深刻な表情に、足が止まる。鼓動が速くなる。
「何か……」
声がかすれた。大柄な服部が真帆の華奢な両肩に優しく手を置いた。
「落ち着いてきけ。おまえの父さんの研究所が、フロギストンに襲われたらしい」
「フロギストン? て、あの最近ニュースでよく見る中国の?」
「ああ。これは国際問題になるぞ」
フロギストンというのは、歪んだ肥大化を続ける中国の中で増え続ける反政府軍を鎮圧するために生まれた政府のための義勇軍のような組織、火消し屋だ。
直接政府がつくったわけではないが、裏でつながっていることは確実と目されている。しかしそれが日本に牙をむく必要などないはずだ。
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