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「どうして……」
「わからん。いくら中国だといっても国際的な批判は免れないこんなことをしでかすとは思えん。だからフロギストンの独断行動だと思うが……」
「どうしてフロギストンの犯行だとわかったんですか?」
服部は開いていた口を閉じ、腕を下ろした。
「確かに、そうだな。笹原先生、何か知っていますか?」
どこかとの電話を終えた笹原邦彦教官が振り返って眼鏡を直した。
「どうやらリークがあったそうです。それまで事件が起こっていることすら誰も気が付かなかったようで、リークを受けた警備会社がグローバルセキュリティ研究所に行ってみて初めて立てこもりが発覚したと言っていました。それがつい30分前のことです」
真帆はスマートフォンで時刻を確認した。8時50分。立てこもりが始まってから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。
「……リークした人の手がかりとかは」
「どうやら電話の声は合成音声だったらしく、逆探知も失敗したそうです。ただそいつはXと名乗ったと言っていましたが、これも大した手掛かりにはならないでしょう」
――とりあえずXと呼んでください。お互いのために――
真帆は唇を噛みしめた。あいつだ。あいつがやったんだ。でもそうだとしたら、どうしてリークする必要がある? とにかく、あいつが絡んでいることは間違いない。
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