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ホテルに着いた工藤は森にかけ直したがなかなかつながらない。
「何してんだあのおっさん……」
スマートフォンに向かって森を罵倒していると、それが聞こえたかのように森から連絡がきたので工藤はうろたえた。
「あ、はい、あの……」
〈ついたか?〉
電話の向こうがずいぶん騒がしかった。
「あ、はい。それでどうすれば」
そのとき、電話の向こうで「パパ!」と呼ぶ声が聞こえた。なんだ?
〈パパと呼ぶな! え? あれが欲しいのか? おいちょっと待て、それいくらするんだ!〉
本当にあのおっさんは何をしているんだ、とただただ疑問符が工藤の頭に湧いて出る。
「あの……?」
〈すまん、801号室に向かってくれ! あと、いろいろ気をつけろ!〉
森は息を切らせてそれだけ言うと電話を切ってしまった。
「はあ?」
何が起こっているんだ? というか、気をつけろって、何にだ?
状況が呑み込めない工藤はとにかく801号室に向かうことにした。
疑問で緊張も消し飛んでいたのか、何の気も無しにドアをノックする。
そしてドアが開いた瞬間、工藤は口を塞がれ押し倒された。
「ンーンー!」
「Who are you?」
口に布か何かを押しこめられていて答えられる状況じゃなかった工藤はとにかく拘束から逃れようと暴れた。
それがいけなかった。重い一撃が腹部に響く。
そして意識はろうそくの炎のようにふっと消えた。
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