10人が本棚に入れています
本棚に追加
しきりに洟をすすりながら真帆が〈500〉と返信すると、すぐに反応が返ってきた。小声で。
「高い! 同じ遠藤のよしみじゃん!」
後ろの席の遠藤長太郎だ。
黒縁眼鏡で背が高く、眉毛が濃い。そしてなにより、図々しい。それが真帆の長太郎に対する評価だった。
同じ遠藤という姓なので並びが近いことが多く、長太郎は情報系の授業には弱いらしく、わからないことがあるとすぐに頼ってくる。
ほとんど考えずに答えを欲しがっているように思えて苛立つこともあるが、運動神経の良い長太郎に実技演習では助けてもらうこともあるのでイーブンだと真帆は思っている。
「じゃ、300」
「まーまーいいじゃん金なんて。どうせ使うことも無いしさ」
「ジュース買うもん」
「そんなもん飲んでたらただでさえ貧弱な身体が育たねーぞー」
「あ、もう手伝わない」
機嫌を損ねた真帆はそれから長太郎の言葉に無反応を通した。
その結果焦った長太郎はまわりが見えなくなったのか、真横に立つ先生の殺気に気づいた頃にはすべてが遅かった。
出席簿の裏が心地よい音を響かせた。
最初のコメントを投稿しよう!