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暇からの逃避に自然とPC機器をいじっていた真帆は、親が気づいた頃にはハッキングツールを自作するほどになっていた。
それは主に自宅のPCから機密性の高いデータを入手する遊びに使われていたが、ちょっとした好奇心から他人のデータベースに侵入したこともあった。
保護者不在のまま友達とも遊ばず成長した真帆には、倫理観の弱いところがある。そして何より他人の感情に疎かった。
ようやくそのことに気づいた真帆の親は慌てた。そしてひ弱な真帆はこの規律が厳しくさらには辛い訓練までもある東都防衛学園にぶちこまれるように入学したのだ。
入学してすぐその厳しさに退学を決意した彼女であったが、結局なんとか通い続けている。
それは彼女にとってはほとんど奇跡のようなことなのだが、初めて同級生たちとの繋がりを感じたからなのか、情報処理という分野で自分の能力が認められたからなのか、本当の理由は彼女にしかわからない。
「ほらよ」
投げ渡された缶ジュースを「ん」と当たり前のように受け取る真帆。プルタブが開けられない彼女を見かねて長太郎は缶を奪い取って開けてやる。
「ほらよ」
「ん」
何でもないように受け取って飲み始める真帆に長太郎はため息をついた。
「ありがとうとかないのかなあ」
「だって、おあいこだし」
「はー、真帆らしいや」
「どういうこと?」
「なーんでもなーい」
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