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〈遠藤柊人について話があります〉
心臓がはねる。音が消えた。思考が絡まる。鳥肌が立った。
遠藤柊人とは、真帆の父の名だ。
危ないとはわかっていながら、返信しないわけにはいかなかった。いつの間にかタッチパネルは回復していた。
〈誰? これ何? 君がやったの? 何する木?〉
軽く肩を叩かれる。びくんと身体が跳ね上がった。
「どうした、ティッシュなくなったか?」
「あ……。うん」
真帆は長太郎の顔を見て大きく息を吐いた。
「洟、たれそうだぞ」
怪訝そうな長太郎に「そんなことない」と答えて画面に視線を戻す。
誤変換に気づいて眉をしかめる。しばらくしてメッセージが返ってきた。
〈とりあえずXと呼んでください。お互いのために〉
〈あなたは遠藤真帆ですね?〉
「訊くまでもないくせに」と小さく呟いて真帆は〈はい〉と答えた。
そしてさらに続けようとしたところにメッセージが返ってきた。
〈尋ねたいことはたくさんあるでしょう。不審に思うのも道理です。ただこうする方がお互い安全であるということをわかっていただきたい。私は遠藤真帆と交渉がしたいのです〉
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