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私が和馬との恋愛から抜け出し、翔太と恋人の関係となってから、もうすぐ一年が経とうとしていた。
ドンッ…ドンッ…ドンッ
ぇ…なにぃ?
…煩いな…
眠りの浅くなった頭の中に不快な重低音が響き目を覚ます。
「また隣のステレオか…こっちは夜勤明けで寝てるのに!」
不快な音で起こされた苛立ちに任せ、横たわったまま肘で壁を『ドンッ』と突いた。
「あの人がこれくらいの音で気づいてくれる訳ないか…。耳栓して寝ればよかった」
私の隣に住む一つ年上の先輩は有名な迷惑女。
ロックバンド好きで、時間も隣も関係無しで大きな音で音楽を聞きまくる。
「はぁ…先輩じゃなきゃ怒鳴り込むのに…」
大きなため息を落とすと、ゆっくりと立ち上がり部屋の電気をつけた。
蛍光灯の明かりに目を細め時計を見ると、午後8時を回っていた。
あれ?…翔太からの連絡来てないよな…
今日は早く終わるって言ってたのに、まだ仕事終わってないのかな…。
ソファーに横たわりながらテレビを見ていると、携帯ではなく部屋の電話が鳴った。
「綾子ごめん!飯の約束無理になった」
電話を取るなり、翔太が言った。
「何で?仕事がまだ終わらない?」
「いや、仕事は終わったんだけど…白石さんがまたトラブっちゃって…」
「それでまた翔太が尻拭いですか?」
短く息を付き、嫌味を込めた口調で言葉を返す。
「仕方ないだろ?俺に教える責任があるんだから… そんなに怒るなよ。 綾子は今夜も夜勤だろ? 明日仕事終わったら迎えに行くから。な?」
翔太は私の機嫌を取ろうと甘えた口調で言う。
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