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直にタクシーは止まる、蓮田クリニックの前に着いた。もう診療時間を過ぎていて窓は暗い。センセイが支払いを済ますとタクシーの扉が開いた。センセイが先にタクシーを降りる。外付けの階段を上り、クリニックの裏口に向かう。私も後に続いた。センセイが開錠してドアを開くと中から押し寄せてきた消毒液の匂いが私の鼻を突いた。 中に入りセンセイが照明をつける。まだ診療を終えたばかりなのか室内はまだ暖かかった。 「手前のユニットに掛けなさい」 「……」 私は治療台に腰掛けた。センセイは私の手首を見る。センセイに右手を引っ張られて左手を歩道についた。擦り傷が出来ていたのだ。  
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