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物心ついた時から、俺の心はどこかおかしく、周りとは違っていた。
「待ってよたっくん」
「遅い。なら歩かないで走れ」
「ヒドッ走ってるから俺!」
それで走っているのか?と思う程遅いスピードで走ってくるのは、綾川瞬(アヤガワ シュン)。俺とは家が隣同士の"幼馴染み"。
いつも俺の後ろをついてきては、「どこ行くの?」「今日おいでよ~」などと呟きながら、ヘラヘラと笑っていた。
今日だってそうだった。
中学校生活最後の休日。俺は一人で本屋へ行くつもりだった。
なのに、
「せっかく中学生最後ってのに本屋って……たっくん変。地味すぎる……」
「じゃあついて来んなよ」
「いーじゃん。オレも暇なんだし~どーせなら、たっくんと最後は楽しみたいじゃん?」
瞬はいつものようにヘラヘラと笑いながら俺の後をついて来ていた。
しかも、俺と過ごしたいとは…。俺が言うのも何だが瞬は変わってると思う。
というのも、アイツはクラスの中でも中心的存在で、いわゆる人気者。
対する俺は…。
目立つこともなく、人と関わるのも瞬を除いては基本苦手で、休み時間などは本を読んで過ごすことが多かった。
根暗な奴。それが俺のクラスメイトからの印象。
当然俺とは性格も立場も正反対。それなのに、瞬は俺を慕って側にいてくれた。
それがひどく心地よく、何よりも嬉しかった。
けれどその一方で、こんな俺といて楽しいのか?と不安でもあった。
いや…一緒にいることが当たり前で、俺はいつかアイツが離れるのではないかといつも、今も不安でしかなかった。
「……もしかして、さ」
そんな思考が頭を駆け巡っていると、今まで大人しかった瞬が不安そうな声で俺の裾を引っ張っていた。
「……何?」
「一緒に行くの…ダメ、だった?」
ギュッとパーカーの裾に力が入るのが分かった。
振り返ると、屈んで上目遣いに俺を見つめる瞬がいた。
……反則だろ。
「ダメ……じゃ、ない」
「だ~よね!何読もっかな~?」
俺がそう答えると、けろりと表情を変え満足気に俺の前を歩いて行った。
上目遣いは…ダメだ。
しかも、俺の身長に合わせてわざわざ屈むとか……。
前を歩く瞬は俺よりも背が高く、嬉しそうな横顔は子犬みたいにあどけなくて、可愛いと思った。
男前な顔してるくせに、何故俺はアイツを可愛いと思えるのか、自分でも初めは謎だった。
けど、それは実に簡単な理由で……。
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