集めた欠片

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「まだ、もう一つ足りない 君が揃って完成するんだ 結婚しよう 俺にも夢を見せて」 右手にはめていた指輪を外して左薬指に 過去の結婚が、不安が一瞬過ったけれど それに負けない言葉を知っているから 「愛してる」 初めてのそれは偉大で 「だから、ずっと愛して」 背中越しから伝わる彼の震え きっと泣き顔なんてもう 見せてくれないだろうから 私の肩に項垂れた貴方の顔を想像して 彼の左手を取って薬指に誓いのキスをした このまま一緒に暮らそうと そう言ってくれたのに ケジメだけはつけたくて 引越しの準備に両家の挨拶 難色を示唆したのは私の両親だった 初婚の彼に、再婚になる私 離婚の原因がこの身体 直接には口にはしなかったけれど 彼の将来も、私の未来も 案じてくれているのも分かってる それでも譲れないから 「彼じゃなきゃ意味が無いの 私を支えてくれたから 今度は彼を支えてあげたい」 困ったような、それでもやっぱり くれたのはお祝いと彼に託した言葉 固く結ばれた掌 所々に潜めたあの人の面影が 彼へと移り変わっていく 遠く離れた地に暮らすあの人に かつて愛した人だから 幸せになろう 私だけじゃなく、貴方にも 伝えられたらいいのにな その二週間後 私達は夫婦になった
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