砕けた欠片

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掃除も洗濯も終わり、ダイニングテーブルに腰掛けて溜め息を吐き出した レースのカーテンの向こう側には、秋から冬を迎えようと黄金の葉がはらりと落ちた その庭だけが色付いて見えて 室内は曇っているせいか薄暗く、ここだけがモノトーンの世界 それが…私の世界になった 結婚して三年 夫とは初めて本気になった相手で 不満なんか無かった ただ、一緒に居たくて 愛されたくて 愛してくれて…   プロポーズされた時は本当に嬉しくて その日から連れ去るように、彼の家で住み始めた その週の日曜日には、私の実家に挨拶に訪れ 喜びの母の顔と、微妙な面持ちの父 「幸せになりなさい」 そう送り出してくれた両親 私の手を大きな彼の手が包んで 頷いてくれたあの日を 忘れる事なんて出来なかった あの時はまだ、この小さな世界での中心は彼と私で廻っていて 色褪せる日が来ようとは、微塵も疑わなかった
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