砕けた欠片

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病院に行ってから五日後 その日は日曜日で普段より遅い起床 チクリと下腹部が痛んだ気がして 「おはよう…」 隣でモゾモゾと動き出した彼に 「おはよう、今、朝ご飯の」 私の声を遮って 「まだ、もう少しこのまま」 甘えた風に抱き寄せる逞しい腕 痛みは感じられなくて 包まれた腕に安堵して 瞳を閉じた彼を見守ってから、私も再度眠りについた 次に目覚めた時は 「い、痛…痛い」… 急激に襲ってきた痛みで、身体を弓なりして 「だ、大丈夫か! おい、………!」 名前を呼んでいる彼の声を朦朧としながら 何とかベットから這い出て、よろめいた私を支えるよう彼が抱き止めた 「ト、トイレに…」 顔が歪んで、彼を気にしてる余裕なんかなくて 宙に浮いた身体は彼によって 狭いトイレの空間に下ろされて、閉じられた空間に一人 でも彼は扉を隔てて、何度も声を掛けてきてて それに応える事なく下着を降ろせば 真っ赤な 鮮血な赤 それが太腿を伝って、ゆるりと流れ落ちる 「うぅ…い、嫌…助け…て…」 悲鳴を上げた気がする 記憶は曖昧 次に映り出したのはタオルケットに包まれて 取り乱した彼がどこかに電話していた姿 その後は途切れ途切れの記憶 揺れる身体に 見上げる窓ガラスに流れる景色 また身体が浮いて 女の人の呼び掛け うっすらと開けて見るものの、瞼が重くて… 片手を握り締められている感覚が僅かにして 私からも握り返そうとしたけれど力が入らなくて スルリと放れた手の感触 後はもう…
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