砕けた欠片

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お母さん… お母さん… お母さん… 何度となく叫んだ それが母に対するものなのか分からなかった 朦朧とした意識 ぼやけて見えたのは白い…天井… 喉を掻きむしりたいほどの渇きに 「み…ず…み、み…ず…」 譫言のように何度となく、この渇きから逃れる為に はっきりと言えているか分からないくらいに唇が麻痺していて 「………ごめん  まだ麻酔が切れるまで飲めないんだ」 はっきりと聞き取れなくて 身体を持て余し 動かそうとするけれど自由が効かなくて それから、猛烈な吐き気 嗚咽を漏らせば、口元に充てられたら柔らかな感触 何とか吐き出そうとするけれど 苦しいだけで、背中をさする誰か 苦しさと格闘して、どれくらいの時間が経たのか 少しづつ、はっきりとしてきた意識 目の前には愛しい人の姿 でも、どうして潤んだ瞳か 分からなくて ただ、その雫が落ちないように 「………」 貴方の名を呼んで 握り締めてきた大きな掌は弱々しく それだけで 私の雫がポタリと落ちた
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