砕けた欠片

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何事もなかったように時間だけが過ぎて 日常は何も変わらなく、必然的に避ける話題 心の奥の棘は刺さったままで お互いに泣き言なんて言えなかった 「今日も少し遅くなりそうだから、晩飯は済ませてくるから」 背中を向けたままの彼 「分かったわ」 物分かりの良い妻を演じて 時間と共に開いていく二人の距離 気付いているのは私だけじゃないのは分かっていても でも、それを打破する術も見つからなくて このまま流れに任せるしかなかった 結婚して三年の月日は 週の半分は一人で食事を済ませ いつの間にか寝室も一人になった 会話さえも短くなって あの人が外で何をしているのか 何も分からなくて 形だけの妻の立場は 「まるで家政婦ね」 吐き出した言葉は虚しさだけ それでも、彼を愛しているから まだ、この愛に縋るしか出来ない 総てを失ったのなら 私はどうすればいいのか 結婚すれば、幸せの延長で    総てが、自分の思い通りにいかないと理解していても こんな関係を望んでいた訳じゃない ねぇ… 貴方は今、何を望んでいるの ねぇ… もっと もっと… 貴方に触れたい
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