第2話

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『似てるよね』 似てるかな? 『愛に餓えてる感じが』 確かに、私もお兄さんも満たされた時間は少ないかもしれない。 それは分かるよ。 だってお兄さんの笑顔、悲しげと言うか憂いを帯びている。 「そら?」 店の奥からお兄さんが心配そうな顔で現れた。 酔いが冷めたのか、甘えた様子は無い。 「その、すみません。僕も酔うと手がつけられなくて」 「みたいですね。びっくりしました」 そう言うと、目をパチパチさせて首を傾げた。 「僕、もしかして襲っちゃいました?」 ――はい? 額に手を置いて、苦悩するポーズを取ってるけど、 『襲っちゃいました?』なんて可愛く言ってるけど、 酔って襲うなんて良くある事みたいな言い方。 つまりお兄さんからすれば、私もお兄さんに群がる女の子の一人な訳で。 「何それ。すっごく私の扱い軽くない? お兄さんにはがっかりだわ」 フンッと横を向いて、階段を上る。 本っ当に馬鹿みたい。悩み損だわ。 「わわ! 違いますよ! そんなそらを軽くなんて。ただー……」 そう言って私の腕を掴んだ。
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