第2話

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もう、それだけで充分だった。 無駄にでかい家に私一人。 特別寂しいと思った事はない。 両親が働いてるから私は生活できてるんだし。 特に話を聞いて欲しい事や、一緒に行きたい場所もなかった。 これがウチの家族の距離なんだろうって。 お兄さんも、そんな冷めてる私に共感したのか、同情したのか分からないけど、気にかけてくれていた。 『そらちゃん!』 店から舞い落ちた花びらを、ぐしゃりと踏みながら。 満面の笑み。 綺麗だし優しいし、お兄さんは可愛いけれど、 違和感がある。 ……お兄さんは多分。 こんな寂しい子なら、優しくしたら離れないって心の何処かで思ってたんじゃないかな。 今も、家も無いならずっと傍に居てくれるんじゃないかって思ってるんだと思う。 自分からは縋れない。 縋っても愛情をくれなかった家族という現実があるから。 寂しい人なんだ。本当は。 優しいのは、嫌われたくないからなんだ。 甘え上手なのは、そうやって生きてきたから。 そう分かっているのに、流されてしまいそうだ。
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