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甘い香り、鼻に当たる微かな吐息。
ちゅっと音を立てて唇を離されると、お兄さんは笑って頬を指で触る。
「そら、だ」
……今、私だって気づきましたよね?
「嬉しい。綺麗です。そら」
はらりとはだけたブラウスが私の体に降りかかる。
甘い香りに、金縛りにあったように身動きがとれない。
お兄さんが私のエプロンを簡単に脱がせていく。
――慣れてる。
エプロンを足から剥ぎとると、ゆっくり太股をなぞった。
こんなに温かい体温を感じるのは、響だけだと思っていたのに。
愛されてるような錯覚に陥るような、優しい手つき。
流されそうになる……。
ランドセルを背負ってた頃から、綺麗だと、ずっと憧れていたんだから。
その憧れのお兄さんが、私を抱き寄せているんだ。
観念したように目を閉じると、タイミングよく階段を上る音がした。
「ただいま―! 聖さ……ん!!!」
フランスパンが顔を出す紙袋を片手に、響が入ってきた。
「うわぁぁぁ!!」
真っ青な顔になりながら。
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