第2話

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「なんでアンタ、ハローワークにばっちり化粧して来てんの? そのつけま、新作だよね?」 黒い髪にだて眼鏡の、一見、真面目そうな姿の柚が私の全身を見ながら呆れていた。 私はブランドスーツに、新作つけま、花の香りを打ち消す香水は『D&G 』のライトブルー。学生時代の箪笥から拝借してきた。 結構平日のハローワークは人が疎らだし、2階の失業保険の手続き窓口は柚だけで、話を誰かに聞かれる事も無かった。 確かにこんなにばっちりメイクして馬鹿みたいだけどさ。 「色々あったんだよ。もう何から説明していいのやら」 公務員やってて、10歳年上の公務員と結婚して安定してる柚が羨ましい。 この前の友達の相手、確か銀行員だったし。 「そらってさ、回りからの評価とか気にして損してるよね。コンビニ行くだけでも服着替えて、メイクしちゃうだろ? 地元じゃ、あんた結構外見だけ良かったから、スエットにノーメイク+マスクとか出来ないんだ」 「いや、それもある。ノーメイク見られたら、影口叩く奴も居るし。でもね、違う。あんたも知ってて黙ってたでしょ?」 そう言って、響から貰ったハローワークの名刺を差し出した。 此処には梅田は柚しか居ない。 「なるほどね……」
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