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「じゃあどこに行くって言うの?」
サングラスに、ニット帽まで被っちゃって。
昔は全然変装してなかったのに、自意識過剰野郎。
「海、行こうか?」
「行かない。絶対行かない」
「――色々話すから。だから、行こ?」
ねだるように私に首を傾けて喋る。
――こんな響なんて知らない。
いつも自分勝手で、ぐいぐい引っ張ってくれて、
包み込んでくれたのに。
なのに、今は違う。私に弱いところを平気で見せてくる。
こんなの私の知る響じゃ、ない。
「いいわよ。でも、簡単に許すと思わないで」
睨み付けながら車に乗り込むと、 響は悲しそうに瞳を揺らした。
そして無言で響も乗り込み、恋人だった時によく行ったあの海を目指した。
香水も変わってるし、全身ブランド品じゃなくなってるし、ちょっと痩せた気もする。
いつも太陽みたいに笑って格好良かったのに。
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