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「何を言っても……信じられねぇよな。はは」
首に手をやり、下を向く響。
背中を向けて、此方を向こうとしない。
こっちを向かせたくて、あの背中を蹴りたくなる。
「私の前に居るのが、本当の響?」
「?」
「昔、私を抱き締めてくれた響は偽物?」
私への気持ちも偽物?
そう喉から出かかって、止めた。
まるで、まだ響を引きずってるようで、惨めになる。
「気持ちは嘘じゃない。騙して傍にいるのが辛くなったのもマジ」
「ふぅん。じゃあ、ちゃんと目を見て言って」
自信満々で、いつも格好良くて、ちょっと俺様で、
でも優しくて。
モデルなのも自慢だったのも本当。
だから情けない声でお兄さんお兄さんと呼ぶ響が信じられない。
「黙って消えて悪かった」
「それだけ?」
「……何だよ」
「なんでお兄さんのペットしてんのよ」
ちょっと皮肉混じりに言った。
「ペット……」
「あら。違った?」
ちょっと肌寒くなって海を見た。
丁度、夕日が沈みかけている時だった。
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