最終章

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同期が秋の挙式を選んだのは私に見せ付ける意図があったのだ。 私と部長はその2週間後に挙式した。あの猪苗代のホテル、決してみすぼらしい施設では無い。むしろ綺麗な方だ。部長は私の親族を宿泊付きのプランで招待した。披露宴の料理も一番上のランク、ドレスもレンタルとは言え一流デザイナーのものだった。ダイヤも1カラット、一般的に言えばランクは上だろう。 しかしボンボンと同期の豪華絢爛たる結婚式に比べたらシケた結婚式だった。化粧室で私が水を掛けたとき、同期が見せ付けてやる、と言ったのはこのことだったのだ。同期の披露宴にも私の披露宴にも出席した人間は結構いた。人間が比べたがるのは当然だ、芸能人並に着飾った血統書付きの同期と普通に着飾った雑種の私では花嫁姿の質の差は散々たるものだった。それを知らない楢和の親族や私の親族は、楢和部長を褒めたたえ、私を若く綺麗な花嫁だと囃し立てた。それはそれで惨めだった、身内にしか褒められない醜い夫婦みたいで。
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