日常

2/4
前へ
/829ページ
次へ
AM6:50 靴を履き、首元の赤いリボンが歪んでいないか鏡でチェック よし、いい感じ! 「おかあさ~ん、行ってくるね~!!」 玄関に立ち、台所にいる母に向かって声をかけながらドアノブを回す 一歩外に出ると、体にまとわりついてくる少し湿っぽい空気 「いってらっしゃい!気を付けていくのよ~」 母の声を背に、階段を駆け下りる 私、長沼 菫(ながぬますみれ) 高校2年生 家から電車で1時間以上もかかる高校へと通っています 駅までは歩いて大体20分ぐらい 私が住む団地から駅までバスが通っているけど、私はあえて利用せず、バス通りから1本入った住宅街を歩いて駅まで向かう なんでバスを利用しないのかって? それはズバリ健康のため なんてね 本当は… 「…いた」 クルクルとカ-ルした髪の毛をボサボサに伸ばしたまま、私の数十メ-トル前を歩く男の子 同じ団地に住む彼は私と同じ高校に通っている 彼の名前は安東 洋稀(あんどうもとき) 私の好きな人 歩くスピ-ドをあげて彼に近づいていく だんだんと縮まる距離に心臓がドキドキと早鐘を打ちだし、緊張からか口も乾いてくる コホっと小さく咳をして 「おはよう、安東君」 少し後ろから声をかけた あ、意識しすぎて声小っちゃかったかも… そう思っていても、彼は少しだけ歩くスピ-ドを落としチラリとこちらを見るだけで、今日も何も言わずに歩いて行ってしまう そう、これが私が高校生になってから続けている毎日の日課 でも一度も返事を返して貰ったことはない チラリとこっちを見てくれるけど、視線も合わない だって、彼の瞳はボサボサに伸びた髪の毛に覆われていて見えないから 声…聞きたいのにな… でも振り向いてくれるだけまだいいのかも プラスに考えないとね、落ち込んじゃう 駅に向かって歩く彼の背中を追いかけるように私も歩き出し、学校へと向かう
/829ページ

最初のコメントを投稿しよう!

153人が本棚に入れています
本棚に追加