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麗しき死神は次の獲物を品定めする為に辺りを見回す。誰にしようかな、どう楽しもうかなと無邪気に笑う彼女の視線が向かう度に皆、一様にビクリと体を震わせた。
男たちは、こんな女に絡んだ事に絶大な後悔をしている所だろう。
ちなみに完全に巻き込まれた形の和馬は彼らを恨みがましい目で見ていた。そんな彼らを見て少女は「んぅ」と声を出しながら赤く染まったナイフを見た。
「つまんなぁい」
間延びした様に紡がれた言葉に誰も反応出来ない。あまりにも場違いで、およそこの場で使うべきではない音の連なりは不協和音を鳴らす。
「つまんない、つまんないよぉ。ちゃんと私を襲ってよ。じゃないと殺せないじゃない。ぐちゃぐちゃに、出来ないじゃない」
うっすらと充血して赤に染まる瞳にはおぞましい程の狂気の光が灯っていた。これは、ある種の脅迫だ。
聞いても聞かなくても末路が変わらない性質の悪い狂言。
「ほらほら、こーんな可愛くて無防備な女の子は他にいないよ?」
学校指定らしいカーディガンを開いて何も持っていないと言うアピールをしてらしい。そんな事するならとりあえずナイフを捨てて欲しいと和馬は思った。
そもそも目の前であれだけの惨劇を演じた女が無防備だと言われて、誰が騙されるのだろうか。可愛いは認めるけど。
「口に出てるよ、おにーさん」
「わざと出したんですよ、お嬢さん」
勿論、嘘だけど。シリアスな雰囲気が少しゆるみ、他の男達が向ける白けた視線が突き刺さる。
少女だけは面白そうにニコニコ笑ってい余計にいたたまれない気分になった。
「おにーさん面白いね。どう?私とイイコトしない?」
「年下には興味ないんだ」
ましてや殺人鬼にはと声を大にして言いたかったが、死にたくないのでやめておく。まあ、そんなものに何の意味もないのだけれど。
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