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タクシーの中は目的地に到着するまで終止無言。
メーターの金額は29700円。
3枚の福沢諭吉を渡すとタクシーの運転手は微笑んだ。
お金の絶大なる力を知ったような気がした。
大学へ進学しなければ、おれはあと3年で大人の汚い世界へ足を踏み入れなければいけない。
おれはお釣りを受け取り、タクシーを降りた。
倉吉から聞いたそれらしい建物が目の前にあった。
幹線道路沿いで公共機関やクリニック関連の看板が目立つ通り。
5、6階程度の雑居ビルが軒を連ねる谷間に、3階建ての木造建築は異質だった。
和洋の様式が混じり合った灰色の板張り、建物の真ん中の入口を軸にして左右に窓を配したシンメトリーな構造。
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