0人が本棚に入れています
本棚に追加
ゼロの家と質こそ違うが、周りを寄せ付けない威圧感は同じ。
玄関のドアの傍らに丸いプラスチックの古風なボタンが備えられている。
押すとビィ~という不快なブザー音が鳴った。
玄関のドアが開く前に、ガシャガシャと重い物がぶつかる音がした。
「早いね」と、学校が臨時休校になったというのに、制服姿の倉吉が顔を出す。
さっきの音の源は玄関ドアの内側に仕組まれている蛇腹式の扉らしい。
「随分厳重なんだな」
本当はすぐにでもゼロの様子を聞きたかったが、なんとなく倉吉が不機嫌になる気がして、柔らかい会話から入る。
「この建物は地元の地場銀行として明治時代に建てられたものなの。国からは文化財に指定したいって要望がくるけど、おじいちゃんは頑なに断ってる」
最初のコメントを投稿しよう!