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「どうして?」
「国の重要文化財になると改築とか勝手にできなくなって、いろいろと面倒なのよ。さぁ、入って」
倉吉はやや自慢げに語りながらおれを家の中へと招く。
内部は無駄な仕切りがなく、吹き抜け土間を中心に各部屋が繋がっている。
複雑に配された太い梁がむき出しで、曲線を描き、幾何学的な模様を形成してレトロでモダンな雰囲気を醸し出している。
白い壁沿いに螺旋状の階段が空間を囲むように回転上昇しながら三次元の曲線を描き、たくさんのドアが等間隔に並んで銀行員が行き来していた部屋がそのままの状態で残っている。
縦長の格子窓を採光のために設けているが、隣のビルが壁となり外光を十分に取り入れられず、夕陽のオレンジ色の光は射しこまれずに薄暗い。
建築当時は周りにビルなんてなかったはずだから、夕方でも明るかったはず。
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