Chaper4  長い夜Ⅰ

6/23
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
土間の上がり口に30センチくらいの段差があり、厚みのない緑色のカーペットが1階の広いワンルームの空間に敷き詰められている。 歩くたびにギシギシ音が鳴った。 部屋の角にどっしりとしたストーブと石油が入っていると思われる赤いポリタンク、隅に座布団が山積みされ、壁にネジ巻き式の古時計がかかっていた。 古時計は文字盤と振り子室が丸みのあるフォルムで上下に重なり、雪だるまを連想させる。 1階はガラ~ンとして田舎の集会場のような雰囲気。 生活感がしない家だなというのが率直な印象。 「宇宙船に招待されたような顔してるよ」 おれが物珍しそうに目をキョキョロさせていたせいか、倉吉が愉快そうに笑う。 「宇宙船といよりもタイムスリップしたような気分だよ」 平静を保ったような口調で答えた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!