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鉄格子の扉とハンドル付きの扉は開けっ放しで通過は可能。
銀行として建てられたものだから、奥の部屋が金庫室だということは安易に想像できる。
10帖くらいのスペースには簡素な木製の棚が左右の壁にあるだけ。
その隅で足を交差させ、膝を抱えた前傾姿勢の体育座りで女の子が金庫室の備品の一部となって固まっていた。
白い丈長ニットに黒のレギンスという初めて見る私服姿。
「ゼロ……」
倉吉が傍にいるのを忘れ、本当の名前で呼んでしまった。
「田中君!?」
ゼロの瞳がおれを捉えると、ものすごい勢いでしがみついてきた。
嬉しさ半分、恥ずかしさ半分。
背中に突き刺さる視線を感じて振り向いたが、倉吉は笑顔。
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