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「…どうして? 何処にあったの?!」 「中庭に落ちてて、猫が見つけて持ってきたからさ? 美波先輩って似たようなの付けてるしもしかしたらって思ってさ…」 「ありがとう…」 咲香は嬉しそうにそう告げると、髪留めを大切そうに鞄に仕舞っていた。 「良かったね、美波先輩」 「…うん。 ありがとう、大切な物だったから助かったよ」 「そんなに大切な物だったんですね?」 「…うん。 姉からの誕生日プレゼントだったから」 「なら、もう無くさないようにね?」 「うん、そうだよね」 咲香は照れくさそうに笑うと、俺は何となくその顔を見て抱き締めてしまう。 「…え?」 「そんな可愛い顔で笑わないでくれません? 抱き締めたくなったでしょ?」 「…あ、あの? 離れてくれないかな」 「やだ。 暫く離してあげませんよ?」 俺が少々意地悪気味にそう囁くと、咲香は恥ずかしいのかまた照れていた。 「…あ、あの?」 「何ですか、美波先輩?」 「…いつまでこうしてるの?」 「さぁ? 美波先輩はどうしたいですか?」 「…離れて欲しいです」 「じゃあ、条件が1つ。 俺の事は下の名前で呼んでくれますか?」 「…り、流星くん?」 「良かった。 名前知っててくれたんですね?」 「…流星くんは目立つからだよ?」 「俺も咲香先輩って呼んでもいいですか?」 「…いいけど、あんまり女の子の居るとこでは避けて貰える?」 「女子はすぐ勘違いするからね… わかったよ、咲香先輩」 「約束したし、離れて?」 「咲香先輩って小さいんだな」 「あ、あの…」 「ごめんね、咲香先輩? 可愛くてつい」 俺がそう言ってそっと離れると、咲香は真っ赤な顔を俯かせてしまった。 「…ねぇ? 流星くんって、彼女居たことあるよね」 「彼女? 別に居ないけど…」 「…本当?!」 「居たことないな、そう言えば…」 「じゃあ、流星くんはキスとかもないんだ?」 「…ないけど、したいの?」 「…違うよ、もぅ」 咲香は照れくさそうにそう告げると、また俯いて顔を隠してしまった。
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