AnotherXALICE

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 四つの月に照らされた海岸で、北のウィッカのアナザーが戦っていた。  北のウィッカの者である、と思ったのは、なんてことはない、そのアナザーが北の魔女によく似たお面を頭に乗せていたからだ。対する男がどこのウィッカの者かは、俯瞰の視点からでは残念ながら分からなかった。  ――しかしまあ、彼らがどこに所属するアナザーか分かるのは、彼らを観察している立場としてはありがたいが……全員が全員彼女たちの面をしていても困るだろうと思う。集団は観察できても、個体の判別などできたものではない。第一流石に不気味だろう……。  そんなことを考えていると、魔女の面が――崖の下にいる彼らを見下ろす形のため、必然的に何より先にその仮面が目に入る。多少デフォルメされてはいるが、本来なら滅多に崩すことはない表情が薄く笑んでいたり、風に靡くやけにサラサラな髪が異様さを際立たせている――ヒュッ、とその場から掻き消えた。
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