4人が本棚に入れています
本棚に追加
「なっ――」
相手の男は慌てて周囲を見渡すが、仮面のアナザーはどこにもいない。デビルの力を使ったことは明らかであるが、どうやら新人であるらしい彼には予想外のことだったようだ。手にした巨大な鋸からして、物理ごり押しタイプ、と呼ばれる一派なのだろう。
……この勝負、見えたな。
仮面のアナザーは大きく空振る鋸を楽々潜り抜け、白百合を持つ乙女の姿をしたデビルを召喚した。魔力での勝負を強いられた物理ごり押しタイプに勝ち目などあろうはずもない。どこからともなく現れた渦巻く水流に呑まれ、声もなく男は倒れた。仮面のアナザーが手を挙げ合図すると、乙女は水と共に地面に溶けるように消えた。それを確認したアナザーはすかさず頭上の仮面を被りなおした。……全く、戦闘に支障をきたす程視界が悪くなるなら端から身につけなければよいものを……。
男の懐がポゥ……と光り、先程のデビルがソウルストーンを抜け出し首を傾げた。
最初のコメントを投稿しよう!