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つ、と細い指先が男の顔に伸びていき、そっとその左頬に触れた。よく見るとそこには親指程の長さの切り傷があった。まだ新しいのか、かさぶたが生々しい。
「あ――」
男はしまったという表情で取り繕う。
「で、でも、もう全然痛くはないんで」
「そうか……?」
魔女の指が彼の頬を優しい手つきで撫でる。
「しかし、我が子が怪我をするのは母としては複雑だな。特にそれがわたしのためとあれば……」
「そんな、勿体ない」
男はぶんぶん首を振る。
「俺はクピドゥス様のためにありますから。むしろこれは、名誉の負傷です」
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