第2話

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きっかけは何だったのだろう。 俺とあいつ。まさしく水と油。 だけどいつの間にか好きになってた。 絶対に上手くいかないと分かってても。 気が付いた時にはもう抗えないほど、惹かれてた。 暑さにうだる寝室のベッドの上、止まらない追憶に憂鬱になる。 『何してんだよ』 あれは糞みたいに暑い夏の日だった。 ただでさえ暑いのに蝉が馬鹿みたいに鳴いていた。 苛々とむしゃくしゃの相乗効果でその日の俺は絶好調に不機嫌だった。 不機嫌を理由に早々と午後の授業サボる事を決めた俺は、校内でも比較的静かで微妙に薄暗い場所―つまり図書館―で惰眠を貪り、貪りすぎて目覚めた時には午後の授業なんかとっくの昔に終わってた。 部活にいそしむ連中以外はとうの昔に下校していて、来た時とはうって変わって静まり返った廊下を俺は急ぐでもなくだらだらと歩いていた。 そして突然目に飛び込んできた見慣れぬ光景。 じっと窓の外を―いや、正確には下を見つめる小柄なシルエット。 窓枠を掴むその手は関節部分が不自然に白く浮き上がっていた。 うちの高校は7階建てと学校としては微妙に高層で、図書館はまさにその最上階に位置していた。 つまりあいつは7階の窓からじっと地面を見つめていた訳だ。微動だにせず。 元々真面目な奴とか優秀な奴が苦手な俺は最初、そ知らぬ振りで素通りしようとした。 だが妙な胸騒ぎというか、違和感というか、何かそんな風なものが俺の足を止めた。 瞬間、そんな自分の行動に自分で戸惑ったが、やっぱり何かが腑に落ちなかった。 何かがおかしい。いつもと違う。何だよこの変な気分、気持ち悪りぃなぁ。 ただでさえ暑苦しくて不快指数maxの所に、これ以上変な謎を増やしたくなかった。 だから廊下を斜めに横切り、あいつに近づいて行った。 隣に立って分かった。あいつは何も見てはいなかった。ただ、地面だけ見ていた。 その小さな両手は何かに縋るように窓枠を強く、強く掴んでいた。 『よう』 声をかけた。そしたら本気でびっくりされてこっちが驚いた。 俺は足音なんか忍ばせてないし、鼻歌を歌ってたくらいだ。 一体何だってんだよ。俺の苛々指数はうなぎ上りだ。
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