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『何してんだよ』
あいつは俺のほうを向いていた。
何も言わずじっと見ていた。
俺はあいつが時々見せる、この視線が嫌いだった。
何の感情も浮かべない目が、ただこっちの『方角』へと向けられているのだ。
俺の背後1m位の所に像を結んだような視線、とでも言えばいいのだろうか。
『…だから何してんだよ』
苦手な視線、そして阿呆みたいに煩い蝉の声に耐えられず再度繰り返す。
同じ問いを二度繰り返されて我に返ったのか、あいつはやっと返事をした。
『…別に』
いや別にって事はないだろう。
『じゃー何でこんなとこでじっと地面なんか見てんだよ』
どうやらそこは触れて欲しくなかった話題だったらしい。露骨に嫌な顔をした。
だが不機嫌だった俺はそれを見て余計に何か言ってやりたい気分になった。
『何?最近調子悪いから死のうかなーと思ってたとか?』
あいつは再び黙り込んだ。
優等生を黙り込ませた事に変な優越感を覚えて俺は調子に乗って続けた。
『一回2位になった位で校長室に呼ばれたって?優等生も大変だよなぁ』
わざと小馬鹿にしたような調子で言ってやった。
多分、俺の顔には意地悪い薄笑いが浮かんでいただろう。
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