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『もっと、じっくりたっぷり、なめ尽くすようにアンタを知り尽くした人間じゃなきゃいけないのよ!』
「なめ尽くすってお前…」
『まあ、あれね、私のように小さい頃から幼なじみでいれた人ぐらいね!』
「……は?」
『こう言っちゃなんだけど、私のアンタに対する愛情は、あいつらの比じゃないわね、数値化不能!』
「………」
『とにかく、そういうわけだから、アンタはもう少し自信を持つ事!わかった?』
「あ、…ああ」
『何?そのふぬけた返事は!本当にわかった?』
「ああ、わかった。お前が俺の事をどう思ってるか理解した」
『………』
「………」
カー!カー!と、沈黙中にカラスが鳴きながら通っていった。
『私、今、なんか余計な事言った?』
「いや、どうだろう、……たぶん言ってないと思うぞ」
『そう、ならいつまでもこんなとこでいじけてないで帰りましょ』
「……そうだな、それじゃあ帰るか」
『まったく、馬鹿の相手してたらこんな時間じゃない!ほら、はやく来なさいよ!走るわよ!!』
「おい、ちょっと待てよ!」
土手沿いを幼なじみの彼女と走っていく。
さっきまで悲しげに見えた夕焼けは、前を走っていく彼女の姿と共に、
とても優しい、穏やかな色で俺を包んでいた。
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