第一章

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そして、そんなことを話しているうちに教室はいつの間にかざわざわと話し声で溢れていて。 黒板の右斜め上に設置された時計を見やればそろそろ担任が来てもいい時間になっていた。 「ほ、保志くんおはようっ」 「んー、おはよ」 「お、おはよう保志くん、今日も早いね!」 「おはよー、まあね!」 キャー、保志くんやっぱカッコイー! なんてスイーツ(笑)さんたちのように頬を染めながら、恭平へと挨拶をしていく数人のクラスメイト。ああここって本当に男子校なんだろうか。 男子校イコールむさ苦しい、汗の臭い、なんて失礼な方向に想像を結び付けていたが全然違った。 まず顔面偏差値の高さ。容姿の整った人間が明らかに多い。イケメンに中性的な顔の生徒、女子にしか見えないようないわゆる男の娘といった属性の奴等。 右も左も恵まれた奴等ばかりで平均顔のオレの立場……。 おまけに親衛隊なんてアイドルみたいなファンクラブもある。 そして金銭感覚の違い。どこもかしこもまあ坊っちゃんばかりで、金持ちの考えは恐ろしい。たった今身に付けている制服でさえ金額がずれている。学園の備品が良いもの揃いなのは嬉しい。ただ正直、温室とか窓にステンドグラスって学園に要るものなのだろうか。そんな風に疑問に思うことも多々あるのだ。 入ってすぐの日、環境に慣れずなんだここ!? と恭平に訴えれば「王道学園だからねえ」と感慨深く呟かれた。王道学園ってなんだ。 チャイムが響いて少し経ってから、ガラリと教室の扉が開いた。ゆるい足取りで顔を出したのは担任のホスト教師───秋山先生だ。たまに秋ちゃんとか、秋センセーなんて呼ぶ生徒もいる。ただし秋ちゃん呼びは勇気が必要だ。
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