第3話

3/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
武響は隣にいる男に話かけた。 頬に剣で斬られた傷が残っている。  歳は二十七。  もっとも頼りにしている将軍であり、幼なじみでもある。 「許勇よ。劉翔が配属された隊はここか」 「そうです。調練への参加は今日が初日になるでしょう」  目の前に広がる原野に機兵の大軍が左右に別れて陣を敷いている。  武響はあえて劉翔の所属する隊はどちらであるか聞かなかった。  実力があれば嫌でも目立つ。 「今日はどのような調連だ?」 「二千ずつに分かれての実践形式です。」 「そうか。それは見物だな」  しばらくして、開戦の合図である太鼓が打ち鳴らされた。  両軍の機兵は走り出し、激しくぶつかりあう。  右から攻める隊の中で目を惹く機兵が二機。  黒い機兵の後に白い機兵が続く。  この二機は隊列を守らず、二千の機兵に突っ込んで行く。  黒い機兵が一振りすると、五、六機が薙ぎ倒される。  白い機兵は槍を突く、速く鋭い。次々と効率良く敵を倒す。  黒い機兵と白い機兵は二千機を相手にして何無く、切り裂いていく。  強い。ここまでとは。  思わず笑みがこぼれる。  分断され、混乱している隊に右から攻める二千の機兵が突っ込んでいく。  もう練習相手にもならなかった。相手は散っていく。 「これほどの豪傑とは。正直、驚いております。」 「私もだ。これほどの豪傑が二人も我が軍に加わるとは力強いな」 「まさに」 「許勇よ。劉翔に千機を与え、最強の軍団を作らせろ」 「はっ、了解しました」 「戻るぞ。城まで早駆けだ」  武響は燃えていた。 乱れた世が、戦乱が、自分を飛躍させてくれると信じる。  天よ、見ているか。私が武響だ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!