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年の頃は淳平と同じくらいか。
背は女子にしては高い方で、その横顔は日本人にしてはくっきりとした顔つきだ。
だが、何より目立ったのは、胸のあたりにまでかかる長い髪だった。
そよ風にあおられてなびくそれは、まるで夕焼け空のように赤く、しなやかだった。
それはたぶん、安っぽいヘアカラーで染めたのとは違って混じりけのない、一点の曇りもない、それでいて極めて自然とも言える、鮮やかな赤毛だった。
どういうわけか、目が離せなかった。
それと同時に、何かとても懐かしい気持ちがこみあげてくる。
いったい、なんだろう?
そんなことを考えながら、どれくらいその横顔を見ていただろう。
少女がその視線をゆっくりとこちらに向けた。
「……あ、えっと……」
つい、口ごもってしまった。
視線は落ち着かずあちこちと泳ぎ、気の利いたセリフなんて何も出てこなかった。
彼女はというと、同じように言葉を発さぬままでこちらを見据えている。
きっと何かを感じたんだろう。
とても大切で、温かい何かを。
でもこの時の淳平はそのことにすら気づくことができなかった。
ただただ彼女と視線を交わし、その姿に見入っているしかできなかったのだ。
まるで、彼女の不思議な雰囲気に心ごと捕らえられてしまったみたいに。
それほどまでに、彼女は……。
「なにいつまでもじろじろ見てんだコラァ」
「……え?」
……いきなり激昂した。
「え? じゃねーんだよ。今あたしのことじろじろ見てたろ。上から下まで舐めるように見てただろ。ド変態丸出しでよだれ垂らしながらよぉ」
「み、見てない。いや見てたけど、そういう意味で見てたんじゃない」
慌てて否定するも、彼女はじっとこちらを睨みつけている。
たった今感じた憧憬を覚えるような不思議な雰囲気はどこへ行ってしまったんだろう。
今目の前にいるのは凶暴な獣のような少女だ。
「なんだ」
「え?」
「それはなんだって聞いてんだよ」
なんだろう。突然意味不明なことを言い出した。
「それってなんだよ。俺は別に……」
「…………」
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