宮田side

2/2
前へ
/8ページ
次へ
『ねえ、知ってるかい? 僕ら本当は、一人だったんだよ』 幼い声が耳元で囁いた気がした。 少し気怠げに身を起こし、隣を チラとみる。 まだ夢の中にいることを目の端に捉え、渇いた喉を潤すべく、床に足をつける。 素足には少し冷たい床が心地よい。 朝の気配に目を細めると、白衣を羽織って窓を開けた。 清々しい風が頬をなで、宮田は 目を細めた。 『ねえ、知ってるかい?』 知ってるよ。 誰ともなしに呟いて、台所へと 向かう。 やかんを火にかけ、茶葉をとりだす。 いつもなら朝食は適当にすませるのだが、今日は“客人”がいるから、そうもいかない。 目玉焼きに食パンで、いいだろうか。━━━まとも、だろうか。 『僕ら本当は、一人、だったんだよ』 知ってるよ。 この、他人と自分を区切る皮膚ができるずっと前。 息をする事も知らず、水に泳ぐ魚であったとき。 小さなたまごの中で、“ひとつ”だった。 知ってるよ。 もう一度呟いて、宮田は卵を ぐしゃりと割った。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加