天使が舞い降りた

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今日は姉貴の結婚式だった。 今頃は二次会の宴もたけなわといったところか。 明日からはヨーロッパのほうに新婚旅行に出発する予定らしい。 オレ、『檜山拓矢』は早々に式場をあとにして帰路についた。 隅田川のほとりの高層マンションの3階。間取りは2LDK 。 隅田川の辺には桜並木が川面に揺れている。 高速道路のテールランプが列をなしてピカピカと点滅している。 着慣れないフォーマルスーツをソファにポンと投げ捨てると 一服したくなりベランダに出た。温かい風が頬を撫でる。 ここに住むようになって二年経つんだなぁ…などと オレらしくもなく感慨に耽ったりした。 ここは所謂都心の高層マンション。 ナースをしている姉貴が貯金を叩いて頭金を入れ買ったものだ。 ローンもあるが、もうかなり少ない。心からスゲーなと思ってる。 根っからいい加減に生きてきたオレにはできない芸当だ。 看護師というのは変則的だし、人の命を預かる激務である。 東京の病院に内定したのを機に上京し、 たった五年で都内のマンションを手に入れた。 できるだけ勤務先の近くに住みたいとの希望があったらしい。 自分が東京の大学に進学すると同時に 姉貴を頼りにここに居候させてもらっている。 まだローンが残っているが 姉貴は同じ病院の医者である義兄のマンションに住むらしい。 なので姉貴は気前よく 「ここはあんたにに譲るわよ」 といって男らしい気風のよさを示したのだった。 ローンは就職するまでは姉貴が払ってくれるらしいが、 そのあとはその借金を払っていかなきゃならない。 「まじ、払っていけるのかな」 就職が難しいご時世、大学2年だから来年度から就職活動が待っている。 経済学部なんて中途半端な所の学生だと英語がペラペラとか、 ディトレードしてるとか、資格持ってるとか…なにかプラスαがないと 厳しいのが現実だろう。
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