天使が舞い降りた

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去年、母は長年患った心臓の病で短い一生を終えた。 父は10年以上前に年下女と蒸発し家族を捨てている。 それ以来まったく逢っていない。逢いたいと言っても逢うつもりもない。 二人の子供抱えて1人で生きていくにはとてもストレスだったに違いない。 なのに自分を私立大学に入れて働き通しの一生だった。 姉は母のことをよく考えられるいい子だったから 専門学校に行きナースの道へと進んだ。 一方不肖の息子は自分勝手でよく問題を起こした。 母の病の原因の一はこんな息子に起因したものだろう。 亡くなってから初めて母に心から済まないと思った。 今日から一人の生活がはじまる。 こんな時彼女がいればなぁ…と思ったりもする。 へぇ・・案外、寂しがりやなのか? 自分自身にキモっ…とツッコミを入れる。 二週間前までは一応彼女がいたんだが別れてしまったのだ。 そう、もう二週間になるのか。 涼子と三度目のデートで徹底的にフラれたのは…。あれはイタかった。 涼子とは学食で告白されたのが始まりだった。 学部も違うし、校内ですれ違う程度だった。 小柄で可愛い感じ。取り立てて目立つ容姿ではないにしろ、 そこそこ狙っている男はいたと思う。 オレはといえば大学に入ってから女関係が切れたことはなかった。 次々と告られ次々とフラれた。 自分でいうのもどうかと思うが、 端正な顔立ち、背丈も180cm超、水球で鍛えた身体。 女子が萌える要素を多分に持ち合わせているらしい。 (これは親友の横溝が言っただけで・・・決して自分で思ってはいないぞ) フラれる時のセリフは『見た目と中身のギャップが激しすぎ』だ。 自分では結構、涼子との関係を大切にしていたと思う。 その証拠に二週間前、彼女とのデートのために完璧なプランを立てた。 普段何もしないこの『オレ』が『彼女のために』一生懸命計画した。 それこそ今度こそ失敗したくない…と並々ならぬ意気込みで臨んだのだ。
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