第5話

3/38
前へ
/38ページ
次へ
 教室に入ると、一瞬だけ時間が止まったように静寂になる。私へ向けられる、生徒全員からの視線の時間。 ――恐怖の一歩。 いつもこの一歩が中々踏み出せない。体と心が別々になったように、本当は帰りたいと叫んでいる。 でも体は帰る訳には行かないと、足をじりじりと進める。今回も一番後ろの同じ席で良かった。 これが一番前の席だったら、背後からの目線ばかりを気にして、気絶しそうだ。 もしも教卓の前だったら……それは一年耐えられるかどうかの地獄の日々だっただろう。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加