第5話

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「……」 「るい? 聞いてるの?」 絆創膏を私に投げつけ、すっきりした曜子は、るいにちょっかいを出した。 「曜子。あんまり、るいを虐めんなよ? 俺と帰ろうぜ」 「うるさい! たかし!」 秋山たかし。るいが一番手なら二番手にもてる男だ。野球帽が似合う、スポーツマンタイプ。アヒルの口のように、前髪を上にぴょんっと立たせ、ツンツンした黒髪の爽やか少年だった。 「ああ、たかし頼むよ。曜子とデートしてあげて」 「な、るいっ! ……ちょっとだけなのに」 振られた曜子を見て、すかさず麻美が茶々を入れる。 「ざまぁー巻貝! ぷっ」 毎度毎度、飽きない奴ら。うっとおしくて仕方がない。 ――絆創膏。最後の一枚だったのに。 それでも何も言えず、曜子の顔を睨むしか出来なかった。 「諸君! グットモーニィーングゥ! 今日も喧しいね!」 猿田登場の朝のホームルームは、緊張が走り教室が一瞬で静まり返る。 相変わらずの黄ばんだ出っ歯が、後ろの席からでも良く見えた。前の席の子はマスクを装着していることが多かった。花粉症って言っていたが、きっと嘘だ。 風にそよぐ耳毛の臭さから、自らの鼻を守る為だろう。
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