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「……」
「るい? 聞いてるの?」
絆創膏を私に投げつけ、すっきりした曜子は、るいにちょっかいを出した。
「曜子。あんまり、るいを虐めんなよ? 俺と帰ろうぜ」
「うるさい! たかし!」
秋山たかし。るいが一番手なら二番手にもてる男だ。野球帽が似合う、スポーツマンタイプ。アヒルの口のように、前髪を上にぴょんっと立たせ、ツンツンした黒髪の爽やか少年だった。
「ああ、たかし頼むよ。曜子とデートしてあげて」
「な、るいっ! ……ちょっとだけなのに」
振られた曜子を見て、すかさず麻美が茶々を入れる。
「ざまぁー巻貝! ぷっ」
毎度毎度、飽きない奴ら。うっとおしくて仕方がない。
――絆創膏。最後の一枚だったのに。
それでも何も言えず、曜子の顔を睨むしか出来なかった。
「諸君! グットモーニィーングゥ! 今日も喧しいね!」
猿田登場の朝のホームルームは、緊張が走り教室が一瞬で静まり返る。
相変わらずの黄ばんだ出っ歯が、後ろの席からでも良く見えた。前の席の子はマスクを装着していることが多かった。花粉症って言っていたが、きっと嘘だ。
風にそよぐ耳毛の臭さから、自らの鼻を守る為だろう。
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