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「ん? 山田綾さん? なんで下を向いているんだい?」
「……なんでもありません」
この教師と目が合うだけで、吐き気がしそうだ。喋りたくもない。存在そのものがセクハラだ。
だが思いと裏腹に近寄る猿田。
――止めて! 近づかないで!
「怪我をしたのかね? 大丈夫かい? 見せなさい」
「いえ、本当に大丈夫ですから」
猿田は腕を無理やりに引っ張り、血だらけの指先をマジマジと見つめた。
「バンドエイドないのか? 傷は深くないな。大したことはなそうだ。これで大丈夫っと」
指先が猿田の口内に入れられ、舌が、唾液が絡められた。口臭だけでも酷いのに、生暖かい唾がたっぷりと付けられた。
「なめときゃ大丈夫。先生ってば優しいだろう? なんたって山田さんを好きだからなー! はははっ!」
――本当にバイ菌になってしまったんだ。全身けがれてしまった。みんなに嫌われても、本当に仕方が無い。
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